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2008.10.26
[更新/お知らせ]
「東京 サクラ グランプリ」ほか受賞者会見レポート


 第21回東京国際映画祭“東京 サクラ グランプリ”には、『トルパン』が見事に輝きました。Bunkamura オーチャードホールにて、クロージングセレモニーが盛大に行われたあとは、別室にてマスコミ向けの記者会見が行われました。こちらでは、受賞者の皆さんの喜びのコメントをご紹介します。


コンペティション部門 東京 サクラ グランプリ&最優秀監督賞『トルパン』



 見事、東京 サクラ グランプリと最優秀監督賞のダブル受賞となった『トルパン』からは、セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督と、主演のおふたり、アスハット・クチンチレコフさんとサマル・エスリャーモヴァさんが登場です。ドヴォルツェヴォイ監督は、ロシアの航空会社に9年間勤めたあと、偶然モスクワの映画学校に入学して映画を学んだという経歴の持ち主。長編初監督となる本作での受賞に「私のこれからの映画人生の“前払い”として賞をいただきます」とにこやかに笑いました。「次回作はおそらくモスクワで撮ることになると思いますが、その後はまたカザフスタンに戻ると思います。子供時代を過ごした場所は、やはり大切な場所ですから」と語った監督は、“カザフスタンに住んでいるロシア人”という立場。カザフスタンでは、この「“カザフ在住のロシア人”をテーマに作品を撮りたい」ということでした。


 主演のおふたりにとって、撮影現場(カザフスタンの草原地帯)での遊牧民に近い生活は大変だったようで、「撮影が始まるとすぐに大変なことだとわかりました。しかし、(普段暮らす地域とは)まったく異なる気候や生活は、とても興味深いものでした」(サマルさん)、「俳優とって一番大切なのは、監督を信頼すること。彼を全面的に信頼して、望むことに従いました。それがスクリーンに出ていると思います」(アスハットさん)と、当時の心境を語ってくれました。


 その後の『トルパン』の上映がさし迫ったこともあり、お三方はこの辺りで退席という運びとなりましたが、ドヴォルツェヴォイ監督は「明日まで東京にいますから、見かけて捕まえていただければ質問にお答えします!」とメッセージを残しました。


コンペティション部門 審査員特別賞『アンナと過ごした4日間』



 17年ぶりの監督作で審査員特別賞に輝いたイエジー・スコリモフスキ監督は、「ありがとう、少しだけお金持ちになった気分です」と(ワザと)淡々とあいさつ。会場の笑いを誘うとともに、記者からの質問に丁寧に答えていきました。TIFFの印象について聞かれた監督は、「カンヌのレッド・カーペットよりも東京のグリーン・カーペットの方がはるかに良いと思います。世界的に“Aクラス”と呼べる映画祭は3つか4つしかないが、(東京は)それに見合う規模と資格を持っていると思う」と答えてくれました。「ワルシャワは公害がひどくて住めない。北ポーランドの湖の地域、マズーリアに見つけたロッジにいまは住んでいて、本作は自宅の近くで撮りました」というスコリモフスキ監督、「受賞は次回作への弾みになりますか?」との問いに、「明日にでも新作を撮りたいくらいです(笑)」と笑顔を見せました。



TOYOTA EARTH Grand Prix『フェデリコ親父とサクラの木』
 コンペティション部門 観客賞&TOYOTA EARTH Grand Prix 審査員賞『ブタがいた教室』



 エコロジーをテーマに本年度より新設された「TOYOTA Earth Grand Prix」を受賞した『フェデリコ親父とサクラの木』からは、ホセ・アントニオ・キロス監督とプロデューサーのロリス・オメデスさんが登壇。同じく「TOYOTA Earth Grand Prix」の審査員賞に輝き、コンペティションの観客賞も受賞した『ブタがいた教室』からは、前田哲監督が登壇しました。



 前田監督は、出演の子供たち手作りの盾も抱えての登場。「ここにも書いていますが“もっと大きく羽ばたけ”(笑)」と今後の抱負を語り、「なぜ(題材が)ブタだったのか?」という記者の問いに(原作がそうだというのはさておき)、「ブタは少し愛らしくてユニーク。僕にはそれが命の塊に見えた。成長の度合いが大きく、人間が食用のために作り出した動物でもある」と答えました。

 「TIFFに参加できただけでも1つの“賞”だと思っている、これからのスペインでの公開に向けて、この受賞が大きなプラスとなって嬉しい」(オメデスさん)、「受賞はもちろん、敬愛する黒澤明、小津安二郎、溝口健二たちの国に来れたと感激しました」(キロス監督)と、喜びを語った『フェデリコ親父~』のおふたり。作品の持つテーマについては、「我々は緑の大地を愛している反面、便利な文明も必要としていて、そこに矛盾がある。自然と文明、その妥協点はどこなのかを考えなければいけない、という想いを込めた」(オメデスさん)と、明かしてくれました。

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